はじめに
この企画「50音ずつ面白い言葉を決める」は、“あ”で始まる言葉から“わ”で始まる言葉まで、50音それぞれの(“ゐ”“ゑ”や“を”“ん”などは除く)「面白い言葉」を発音・意味・字面などから多角的に考察し、それぞれの頭文字で一番面白い言葉を独断により決定するプロジェクトである。
また、いわゆる「50音」だけでなく、濁音・半濁音それぞれの面白い言葉も選考し、“が”で始まる言葉から“ぽ”で始まる言葉で最も面白い言葉までもが最終的に決められた。
企画は主に筆者が所有するDiscordサーバー「顎集会」内にて進行し、2024/12/07~2025/3/20の長期に渡って行われた。
各「面白い言葉」の決定に使用されたのは、チャットによる議論とアンケート機能による投票である。
当記事はその企画の結果をレポートするためのものであり、各「面白い言葉」について、それぞれ数行の解説も付けている。
文章をすべて合わせるとそれなりの量になってしまうため、読み方については気になる単語だけ解説を読む「つまみ読み」スタイルでも構わない。
図鑑をパラパラと眺めるように、ぜひ各々のペースで、好きなようにお読みいただきたい。
前置きが長くなってしまったので、さっそく“あ”から、我々が蒐集したオモシロワードの紹介に移らさせていただこう。
各ワードをクリック/タップすると、そのワードのGoogle検索ページにジャンプする。
今回私たちは「まだ世の中に発見されていない面白い言葉を発見する」という点も重視したため、マイナーなワードが多くなってしまった。
なので「この言葉なに?」と思ったときには、ぜひワードをポチッと押してみてほしい。
では、いざ出発しよう。
この「50音ずつ面白い言葉を決める」の旅へ……
“あ”~“わ”
あ アッラー
解説
のっけから神の御名を“面白い言葉”として取り上げる無礼、どうかお許し願いたい。
「イスラム教が信仰する神」を意味する語、というイメージが日本では強いが、本来はアラビア語で単に「神」(正確には「アブラハムの宗教」においての神)を意味する単語らしい。簡単に言ってしまえば、「ヤハウェ」や「エホバ」の別称なのだそうだ。
そんなアッラー、ひいては神に対する信仰を持つ方々は日本にも大勢いらっしゃるであろうし、その方々に不躾となる恐れを承知で一つ、申し上げさせていただきたい。『アッラー』って面白くないですか?どうしても日本人の言語野にとって「アラ」という音は感嘆(もしくは魚)であるし、それに“ッ”と“ー”が足されてしまっては、必然的に陽気なおばちゃんの姿が脳裏に浮かんでしまうのである。
ちなみに、「感嘆」についてだが、なんと『アッラー』は感嘆の言葉としても(主にアラビア語圏で)使われるようであり、(「神の名をみだりに唱えてはならない」という決まりがイスラム教には存在しないらしい)どうやら実際にアラブの陽気なおばちゃんが『アッラー』と驚いていてもおかしくないようである。言葉って面白い!
その他候補
い イランイランノキ
解説
日本語の目を通して見たら「要らん要らんの木」と取れてしまい、しかも実物を見たら「たしかに要らん要らんの木かもな」となんとなく思ってしまうような絶妙なビジュアルなのである。ぜひ上の“イランイランノキ”から検索ページに飛んでみてほしい。
この“イランイランノキ”、正直語れることが多すぎるワードすぎて、全てをここで語ると2ワード目で小レポートくらいの文量になってしまう。さすがにそれは酷なので、興味のある方だけ独立専用特集ページ〔イランイランノキを崇める会〕をご覧いただきたい。
その他候補
解説
そのあまりの語呂の良さから、“う”という激戦区にあって最初から最後までほぼ異論無く居座り続けた豪者。
“ウンウン”というほのかに茶色さを醸しだす響きもグッドだが、注目したいのはこの言葉が「未発見元素」を表すための言葉だということだ。まだ発見されていない「119番目の元素」を表すための仮名であり、その意味は「ウン(1)ウン(1)エン(9)ニウム」。つまりただ“名前”だけが宙に浮いている言葉ということで、非常に興味深い。
この興味深さも、ウンウンエンニウム人気の一因だ。このことから分かるのは、“面白い言葉”として選ばれるために必要なのは、Funnyさだけとは限らない、ということ。時にはInterstingさも、重要な評価点となり得るのである。
その他候補
え えんがちょ
解説
このワードの面白さは、全国のかつて男子小学生だったおじさんたちによってすでに証明されているだろう。かつて子供たちは、不浄なるものを避けるために繰り返しこの4モーラを発していた。それも頷けるほど、この『えんがちょ』にはパワーがある。
そしてなんとこの言葉、内実が一切不明、つまり意味等がよく分からないまま使われているのだ。由来からして、「縁が切れる」「因果の性(いんがのしょう)」などの諸説こそあれ未だ解明には至っておらず、ましてや当の子供たちなど意味も由来も分からずに使っていただろう。
中身が見えない、ただその発言に相応しいシチュエーションのみがある言葉。言語というものの神秘性すら、この『えんがちょ』から感じ取ることが可能であるのだ。
その他候補
お オポポナックス
解説
この企画において、1つの頭文字に対し多数の強ワードが候補に上がることは珍しいことではなかった。その中でも、“お”はもっとも強豪揃いだったと言ってもよいだろう。
たとえば『おくんなまし』。お願いするための言葉なのに、あまりにもアホっぽいその響きによって、早い段階で候補に挙がったワードのひとつだ。
たとえば『オンザ眉毛』。“オンザ”の後に“眉毛”を続けるというコロコロコミック的暴挙のみならず、恐ろしいことにその言葉が指し示す髪型が絶対に「オン」していないというパラドックスにより、一定の支持を集めたワードである。
たとえば『おもろそうし』。“おもろ”って入ってしまっており、人気となるのはいやがうえにもであった。だがしかし、これらテクニックを磨いた数々のワードも、頭文字“お”の玉座に座ることはできなかった。
その原因は、「彼」が存在したからである。その彼の姿を、ぜひとも今この文章を読んでいる視線を上へと動かして、刮目してほしい。…………………………見ましたか?これが王の器というものです。
その他候補
か カチョエペペ
解説
小島よしおの新ギャグではなく、実在するパスタ料理である。
筆者はこのワードを知るまで、もっとも面白いパスタの名前はペペロンチーノに違いないと思っていたのだが、いやはや、言語の世界とは奥深いものである。
その他候補
き キズパワーパッド
解説
ここにきて明確な固有名詞が登場。キズを治すパワーパッドだから『キズパワーパッド』であり、治療器具なのに「治す」を省略して“キズパワー”にしてしまっているのがワイルドである。“パワーパ”部分も地味にナイス。ちなみに“パワー”が付く言葉、あと二つ控えております。
その他候補
解説
1がシングル、2がダブル、3がトリプルということはよく知られている。では、4は?なんと「クアドルプル」である。
この時点でなかなかに面白いし、ホワイアメリカンピーポーと厚切りジェイソンへの意趣返しもできるのだが、我々オモシロワードハンターはこの程度で満足はしない。そう、我らはインターネッターでありながら、スポーツ用語も見逃すことはなかった。
それがこの、『クアドルプルダブル』である。リズムの良さ、ビミョーな不条理さ。味わい深い。
その他候補
クエスチョネア
クンネエチンケ
クインテュープルボギー
正直筆者のイチオシはこれなのだが、投票では『クアドルプルダブル』の方が人気であった。
最終的には民意で決まるシステムだったので、そこまで結果を信頼しないでオポポナックス(これは違う)。
け ケアウホウ
解説
ゴリラワードその1『ケアウホウ』。
“ケア”がついてる単語の中でもっとも理性を感じさせない言葉であり、そのくせ言葉の意味はハワイのリゾートと、かなりリッチな感じである。
だが、今更そんな御託を並べても仕様がない。ケアウホウ。今はただ、その響きを落ち着いて味わっていただきたい。
その他候補
ケツァルコアトル
ケツメイシ
ケ・セランパサラン
「ケセランパサラン」の表記揺れとされている言葉だが、この言葉について衝撃的な事実が明らかになった。
詳しくは別ページ〔ケ・セランパサラン事変〕を参照。
解説
ボリビアのコチャバンバという都市で発生した痛ましい騒動であり、“面白い”だけで片付けてしまうのは不謹慎な出来事である。だが、あくまでフラットにその「言葉だけ」を考慮したときに、『コチャバンバ水紛争』という文字列が私たちの脳にある種のエンドルフィンをもたらすことは否定しにくい事実である。
この騒動がきっかけで、人々の力によりコチャバンバの水道インフラが整備されることになった。今こうして言葉の手慰みを楽しめているのも、“水”という生きるために欠かせないものが問題なく接種できる環境にいるからだということを忘れてはならない。コチャバンバに幸あれ。
その他候補
こぎみゅん
コミュニケーション検定
こちら葛飾区亀有公園前派出所 両さんの天体大達人
さ 参議院議員
し シワシワネーム
解説
「キラキラネーム」という言葉が、世の中に定着しきってから久しい。しかしキラキラと輝く光があるならば、すべからく闇も出来てしまうのが世の常である。そう、私たちは向き合わなければならない。『シワシワネーム』という闇に。
いわゆる“古臭い”名前を指す言葉としてキラキラネームと対比される形で登場したシワシワネームだが、正直、いくらなんでも失礼すぎるだろうこれは。
この言葉自体かなりのキラキラ言葉であり、“キラキラ”と合わせて擬音にしたかったのかもしれないけど、にしてももうちょっと、こう、なんか、他になかったのか?
存在が礼節を欠いているな言葉ではあるものの、申し訳ないことに“存在が礼節を欠いている言葉”は面白いので、“し”のトップに輝く器であると言えるだろう(ちなみに、後にもう一つ同じ理由でのし上がった言葉が出てきます)。
その他候補
す スクヌクヮ
解説
アイゴという魚の稚魚のこと。沖縄方言ではアイゴが「スク」として知られており、『スクヌクヮ』は「アイゴの子」という意味の言葉だ。
まず注目すべきは“スクヌク”のリズム感で、それに被せるようにおそらく沖縄のためだけでUnicodeに収録された文字である「ヮ」がそっと配置されており、その配列の妙がこのワード特有のグルーブ感を生み出しているのだ。
しかしこのスクヌクヮ、スクなくともインターネット検索では文献がほとんど存在せず、個人サイト等での使用例こそあるものの本当に言葉として存在するのかが怪しい。
実際、「面白いが言葉としてほとんど使われていない」という理由で選外となった言葉は多数あり、そういう意味でこのワードはかなり危うい位置にいるとも言える。
その他候補
せ セポクラ
解説
人気YouTuberである「SEIKIN」氏と、そのパートナーである「ポンちゃん」の二人プレイで送るゲーム“Minecraft”の実況シリーズ。それが『セポクラ』である。
セイキンのセとポンちゃんのポとマインクラフトのクラから生まれたのが、この異様なオーラを放つ四文字だと言うのだからものスゴい。
その理屈なら、「よゐこのマイクラでサバイバル生活」なんてアハクラになってしまうではないか。
おそらく、こういう名付けが出来る胆力こそ、SEIKIN氏が単に「HIKAKINの兄」という肩書に収まらない独自の人気を獲得できた一因なのだろう。
その他候補
そ 損気
た 垂水区
解説
ワールド・ワイド・ウェブはすべての土地から閲覧できるものであり、当然この文章も、日本語が理解できる限り場所を問わず読まれていると考えてよいだろう。
その上で、こちらの垂水区に在住の方もいらっしゃるということを十分に理解した上で、一言申し上げさせていただきたい。「垂れてる水」て。
“垂水”という二つの表意文字を認識した瞬間にはもう、脳裏に浮かぶはボーちゃんである。オマケにそれが“たるみ”と読まれるのだからもうすごい。
その他候補
ち 超熟
解説
「超」という言葉がつく時点で、一定以上の面白さは保証されている。それゆえ、ともすれば「下品」という誹りを受けかねないのが、“超”という冠辞がつくワードに共通の弱点ではあるが……そのハンデを乗り越え、シンプル・イズ・ベストにこの面白さを実現した『超熟』の功績は認められるべきであろう。
食パンとして広く知られているがゆえに、後半までその響きになかなか気付かれなかったが、気付いた時点で笑いなしにこの商品名を見ることはできないのである。
その他候補
つ ツィツィミメ
解説
『ツィツィミメ』。アステカ神話に登場する「闇の悪鬼」たちの総称であり、なるほどたしかに“ツィツィ”の時点で日本人に発音できるのかという様な禍々しいオーラを感じさせる。
ちなみにツィツィミメは複数形で、単数形の場合は『ツィツィミトル』となる(逆の方がしっくりこないか?)。オマケに英字表記はツィツィミメが「Tzitzimime」、ツィツィミトルが「Tzitzimitl」で、すごいですね。人間って。
その他候補
て てぃーてぃーてぃーてれって てれてぃてぃてぃ 〜だれのケツ〜
解説
この企画では、「受け狙いの言葉はなるべく避ける」という方針で進んできた。たとえば“つ”のトップは一時期『鶴瓶上岡パペポTV』という番組名だったのだが、「昭和の番組らしくふざけてるだけ」と判断され『ツィツィミメ』にその座を明け渡した。
しかしそれを踏まえた上で、今、“て”のトップを見てほしい。これは「舞祭組」というバンドの2枚目(2枚目でこれ?)シングルで、確実にウケ狙いであるにもかかわらず、そのあまりに有無を言わなさすぎる破壊力で、トップの座をゴリ押しでもぎ取った唯一のワードである。ためしに口に出して読んでみてほしい。
これを真顔で読むことが出来たのなら、ぜひご連絡を。あなたを勇者と称えよう。(ちなみに私は、この曲をまだちゃんと聴くことが出来ていない。神聖さが失われる気がして)
その他候補
と 唐船ドーイ
解説
“とうせんどーい”ではなく“とうしんどーい”であり、しんどそうである。
オモシロワードの名産地、沖縄出身二つ目で、琉球民謡の一つである。歌詞でもまさに『唐船ドーイ』と言っている。ちなみに『唐船ドーイ』は「唐からの船が来たぞー!」という意味らしいらしく。おもろい。
しかしまぁ、同じ曲名なのに『てぃーてぃーてぃーてれって てれてぃてぃてぃ 〜だれのケツ〜』とは面白さの質がえらい違いである。
その他候補
な ナットウキナーゼ
解説
納豆菌が産出する酵素のことだが、だからってここまで納豆菌要素の強い横文字にする必要が本当にあったのだろうか。
しかもこの『ナットウキナーゼ』、それなりに日常にメジャーな言葉でもあり、海外でも「Nattokinase」として我が物顔でサプリとして販売されているほどコイツは人々に驚くほど受け入れられてしまっている。しかしどこまでいっても彼は、英語ヅラしているにもかかわらず7割が納豆菌で構成された言葉なのである。
ちなみに“アーゼ”部分は、尿から取れる酵素「ウロ(尿)キナーゼ」からとられたものらしい。臭い仲、ってな感じだろうか。
その他候補
企画開始の序盤も序盤にナットウキナーゼで合意が取れていたため、ほとんど候補は無かった。
解説
トキの学名であるが、学名であるならもう少し賢く振る舞いなさいと言いたくなる響きのバカ具合であり、三島由紀夫でもそんなに日の本誇示しないぞと言いたくなるくらいの日本アピールぷりである。
しかもしかも、これらの要素にもかかわらずトキは別に日本の国鳥でもなんでもなく、なんなら日本固有の種でもない。別に中国とかにもニッポニア・ニッポンは飛んでいるのである。恐ろし~。
余談だが、サーバー民からの通称は「ニポニポ」だ。
その他候補
ぬ ヌプツェ
解説
一般的に50音一文字の中でもっとも面白いとされるのは、この“ぬ”であることが多いだろう。
そんな“ぬ”まで来て、頭文字のポテンシャルを最大限活かした完全ストレートプレイヤーが登場した。
ヌ・プ・ツェ。「問答無用」という言葉がこれほどまでに似合うワードもなかろう。
“発音”というただ一点で勝負を仕掛けてきた“ヌプツェ”について、「この言葉が何を示すのか」を説明すべきだろうか。いや、それは野暮というものである。
その他候補
ね ネガポ辞典
解説
「ネガティブな思考をポジティブに変換する辞典」としてリリースされ、書籍化までなされた大ヒットアプリがある。
しかし、そのアプリの名前が『ネガポ辞典』だとしたら、あなたはどうしますか?そもそも『ネガポジ』の時点でけっこう面白いのに、ネガポジの辞典でネガポ辞典。
「言葉をポジティブに変換する」というこのアプリの精神は、どうやらその命名からにじみ出ているようである。
ちなみに、ヒット時には“辞典”の変換候補も募集されており、そのキャンペーンの名は「あなたの『ネガポ』大募集!!」。……たしかに「ネガポ時点」、使っているとどうやら底抜けに明るくなれる様である。
その他候補
は 歯舞群島
解説
オモシロワードの宝庫、アイヌ由来の言葉がここにきて登場。「歯が舞う」という怪奇幻想小説のような絵ヅラをいやがおうにも想像させられてしまう群島、それが『歯舞群島』である。
「ハ・アプ・オマ・イ」 というアイヌ語の当て字だそうだが、だからってなんで「歯」と「舞」を当てたんだ。おかげで“ぼ”がどこから出てきたのか分からなくなっちゃってしまっており、日本人がKnowのKとかに文句を言えなくなってしまう。
そしてこの言葉が原因で『歯舞村』『歯舞昆布』『歯舞漁業協同組合』などが生成されてしまっており、歯がダンスしている言葉がそれなりの数存在しているのが日本語の現状である。
その他候補
ひ 非想非非想天
解説
オモシロワード産出量なら、仏教用語だって負けちゃいない。仏教における最高の世界、「無色界」のさらに最上位の領域だそうで、例えるなら仏教のエンドコンテンツである。
そんな大事な場所なのに、日本語で書き表すと非想非非想天(ひそうひひそうてん)になってしまう。なのでこの国では、“有頂天”と言い換えられることの方が多いようである。
ちなみに“非想”とは煩悩を捨て去った状態で、“非非想”とは僅かながら煩悩が残っている「非想ではない」状態のこと(なんの遠慮もなく二重否定を組みこむ所こそ上位ワードの器)であり、まとめると「非想であって非想ではない者の天界」、ということだ。
つまり“マリオ&ルイージRPG”みたいなことで、言わば“非想&非非想Heaven”なのである。(筆者は宗教学についてまったくの専門外なので、全然間違ったことを言っていたらごめんなさい)
その他候補
ふ 夫妻肺片
解説
カルトグロ小劇場映画のタイトルではなく、れっきとした中華料理の名称である。
「フーチーフェイピェン」の音の時点でそうとう怪しいのに、そこに「夫妻の肺の欠片」という字を当ててしまったらもうそれは経口摂取する物体ではなくなる。
全ワード中でもトップクラスの異常者であり、その禍々しさはピェン🥺では一切誤魔化しきれていない。なんでももともとは、ある四川の料理人夫妻が廃棄される予定の牛モツの欠片を使って発明した料理らしい。
そのため当初の名は「夫妻廃片」だったそうで、「廃」という字の不吉さを嫌って「肺」に変えられた……という話が伝えられているが、(少なくとも日本人にとっては)どう考えても「廃」の方がマシであり、そんでそもそも夫妻肺片に使われるモツには肺はほとんど入らないというのだから、いやぁ、四千年の歴史とは恐ろしいものである。
その他候補
へ 屁理屈
解説
かなり初期の段階から決定していた言葉だ。何度見返しても「やはり“へ”の王者として相応しいな」と頷ける。
くだらない理屈、だから屁理屈。ははははは。考えてみると、人が「屁理屈言うな」なんてことを言うとき、その発言にオナラが伴っていることは一ミリも考慮されないのだ。
『のどちんこ』の“ちんこ”くらいの存在感になると皆ちょっとさすがに気にするが、『屁理屈』の“屁”は発言したとたん我々の会話にガスとなって(←屁だけに)紛れ込んでしまうのである。
いやぁ、面白いッスよ。屁理屈抜きで。
その他候補
ほ 北斗のマンチョコ
解説
「北斗の拳」と「ビックリマンチョコ」のコラボ商品だが、流石に度肝を抜かれる。北斗のマン!?
かつて“の”という助詞の後に“マン”が配置されたことは数えるほどしかないはずであり、それをのうのうをやってのける胆力にはヒャッハーと笑うしかない。
ロッテが“拳”を“ケン”という音としてだけで捉えていなければこの商品名にはなり得ないと思うし、しかもこれのせいでケンシロウたちが「北斗のマン」ということにされてしまったのだから、爆笑である。
さりげに“マンチョコ”部分の発音も高得点。ビックリマンチョコの時点で……と思うかもしれないが、“北斗の”が頭にくるおかげで“マンチョコ”が強調されているのだ。
その他候補
ま マー油
解説
ラー油のパクリであり、26話目くらいで出てくるニセモノキャラである。
由来もスゴく、マー油の始まりはとある日本のラーメン屋店主が「ラーメンに入れると魔法のように美味しくなる油」として開発したのが出自。つまり「魔法の油」だから「魔ー油」ということであり、かなりキテいる。
地味に発音も「まあゆ」と気が抜けており、字面もカタカナと漢字の混合でいい感じにバカっぽいなど、全ての項目において平均以上の得点をたたき出す隠れた名プレイヤー。
その他候補
み 巳己巳己
解説
“よく似ているもの”を指す四字熟語である。なぜこんな字面になっているのかというと、“巳”と“己”が字として似ているから。恐らくその一点だけが理由でこんなことになってしまっている。
しかも、「後手後手」とかと同じ二漢字を繰り返すタイプの四字熟語であるのに、“みこみこ”でもなく“しきしき”でもなく“みこしき”という読みだと言い張っているのである。
しかし、マイナー熟語に詳しい方なら、このワードが『已己巳己(いこみき)』と意味も字面もそっくりな、巳己巳己であり已己巳己である言葉なことにすぐに気が付いただろう。もしかしたら「已己巳己の方が面白いだろ」とまでお思いになったかもしれないし、なるほどそれもたしかに一理ある。
だが、このワードだけがトップとして選ばれているのには、ある「取引」が背景にあったのだ。詳しくは別ページ〔2.24已己巳己騒動〕を参照。
その他候補
む ムヒョキャラ
解説
まず、『ムヒョキャラ』が“無表情キャラ”の略であるという受け入れがたい事実から説明しなければならない。
無表情を“ムヒョ”と略すなどという蛮行は社会通念上到底認められるものではなく、我々日本語話者は断固として異を唱えるべきである。
だって“ムヒョ”ですよ。憎めないコミックリリーフの口癖でしかないじゃないですか。
Wikipediaの「ムヒョキャラ」の記事(あるなよ)では、その例として“ハローキティ”や“くまもん”等が挙げられているが、何も知らない人が『ムヒョキャラ』と聞いて思い浮かべるマスコットは100%まりもっこり確定である。
こんな言葉がまかり通っている事態を目の前にしたら、どんな無表情キャラでさえもう笑うしかないだろう。ムヒョヒョヒョヒョ。
その他候補
無味無臭
☝ ムミムシュー
め 目茶目茶
も モブツセセセコ湖
解説
オモシロワード界の吉本興業、〇〇湖の一族がここに来てトップ入り。カタカナにすれば言うまでもなくモブツセセセココであり、ヤバい。
ウガンダとコンゴ共和国の間に位置する湖であり、一般的な呼称は「アルバート湖」。なのだが、政治家のモブツ・セセ・セコ・クク・ンベンドゥ・ワ・ザ・バンガ(←こちらも候補だった)氏が現コンゴの指導者だった時代、彼によって一度自身の名を冠する呼称に変えられており、現在もこちらの名前で呼ばれることがある、ということらしい。
そんなデデデみたいな……
その他候補
や 焼け太り
解説
『シワシワネーム』に続く、「存在事態が失礼」な言葉2号。
「火災に遭ったものの、かえって以前よりも生活が豊かになる」とを指す言葉だが、その状況を『焼け太り』と形容してはいけなかったし、そもそも「火災に遭ったものの、かえって以前よりも生活が豊かになる」ことを表す一言がこの世にあるなよ!
日本語という言語はひょっとして、ものすごく性格が悪いんじゃないかと思えてくるこの一単語。死語になりつつある(当然)気もするが、広辞苑界の永沢として細々と生き残ってほしいものである。彼は焼け痩せだろうが……。
その他候補
ゆ 湯湯婆
解説
ご存知の方も多い表記かもしれないが、「湯たんぽ」はこう書く。もうさすがに千と千尋であり、実際私もこの企画の中で何回も「湯婆婆」と打ってしまっている。
中国から伝来した「湯婆」に、日本で“湯”がついて『湯湯婆』になっちまったらしいが、“湯”をつけることに何も疑問を感じなかったのだろうか。
このことを知った今の私には、“々”がスネている姿をありありと脳に浮かべてしまうのだ。
その他候補
湯たんぽ
弓脚大偽塵芥虫(ユミアシオオゴミムシダマシ)
ゆ実
“ゆっくり実況”の略であり、そのありえなさから湯湯婆と接戦したワードなのだが、「オタクくさい50音になる」とケチがつけられたのもあって候補に甘んじた。まぁセポクラとかあるけど。
よ よだれ鶏
解説
「よだれが出てしまうほど美味い鶏肉料理」 だから『よだれ鶏』らしいが、そんな名付けをしてはダメです。
その他候補
よろしくお願いします
まだ投票しかシステムが無かった時に、一回これをトップにしてしまったことがある。
ストレートな「面白い言葉」が愚直に挙げられている中で、ただの『よろしくお願いします』が提案されれば、それはたしかに輝きを放ったかもしれない。
だが、それは“言葉の面白さ”ではなく“この企画でその言葉を提案することの面白さ”なのだ。最初は面白かったとしても、すぐにその灯は潰えてしまうのである。
ら 乱痴気騒ぎ
解説
ランチキというトンチキな響きが「乱」「痴」「気」なんていう三つの漢字で構成されて、しかもそれが騒いでいるのだから、もうすっかり我々オモシロワードハンターはこの言葉にメロメロになってしまった。
乱れる痴の気ですからね。もう放送禁止まっしぐらであり、にもかかわらず雰囲気だけ見るとどことなく純文学の気配すら漂わせている。いい言葉ですねぇえ。
その他候補
る ルボンボ地方
解説
ゴリラワードその2ついに登場。
海外の土地名が多くなってしまっているのは申し訳ない。しかし、『ルボンボ地方』を知っておきながら無視することは我々オモシロワードハンターにとって不可能な行いであった。
ルボンボという男子小学生歓喜音韻に、その大味さをカバーする脱力系な「ちほー」の響き。ちょっと魅力的すぎるし、ポケモン次回作の舞台がこれであってほしいと強く願いたい所存であルボンボ。
その他候補
れ レバミピド
解説
レバミピドとは、胃壁を守る粘膜を増加させるため胃潰瘍の薬として使用されている、プロスタグランジン(PG)の産生を促進させる成分であるが、そんなことはどうでも良い。
「人間には発声不可能な音を便宜上文字に表すとこうなりますよ」みたいな言葉『レバミピド』が、この世に存在するということがもっとも重要なのである。
ちょっと“レバ”がレバーっぽいかなというだけで、ほとんど何者でもない文字列なのがポイント。
その他候補
ろ ロミジュリ
わ ワークマン女子