この記事が公開される本日2025/11/16という日付には、我々にとってある重大な意味がある。
この日は、ふりーむでゲーム『田丸でGO!』が2015/11/16に公開されてから、10周年の記念日なのだ。
「あご通信」の大元であるDiscordサーバー「顎集会」では、この『田丸でGO!』という作品がこよなく――いや、ある種異常とも言える偏愛を持って愛されてきた。
(ゲーム内容についてまだご存知でない方は、ページ田丸でGO! - 現代ゲーム博覧館を先にお読みいただくことをおすすめしたい)
インディーゲームの小学校があったならば、『UNDERTALE』とは同学年となる『田丸でGO!』。
その10歳の誕生日をサーバーでお祝いさせていただきたく、この「あご通信」において【田丸でGO!特集】を組む運びとなった。
私げをからは、「顎集会」の運営として『田丸でGO!』がどのようにサーバー内で流行していったか、その遍歴を辿る記事を執筆させていただく。
ひとつの“内輪ネタ”が、コミュニティ内でどのようにして広まるか……?「狭い空間での流行」という現象に対する洞察をなにか与えられる記事となっていたのなら幸いである。
(ただし、客観的な分析というよりは、げを個人としての“体験”を述懐している面も多くある。あくまで“私にとっての『田丸でGO!』”ということで)
Discordは、もともとゲーマー向けに開発されたサービスである。
そのため、「ゲームを一緒に遊ぶ」機能に定評がある。
「画面共有」機能を使えば、ゲームのウィンドウを簡単に共有することができ、ちょっとした配信者気分になれる。
サーバー民のひとり、
彼は「東方Project」シリーズの配信をよく行っており、その影響で「顎集会」にはちょっとした“東方ブーム”の萌芽が見られていた。
管理人である私も、それに乗っかってみようかなと思い、「東方」ゲームを配信してみることにした。ただし、本家シリーズではなく、あえて二次創作ゲームを選ぶことに。
そしてプレイしたのが、『東方真珠島 ~ Hollow Song of Birds』という作品である。

スクリーンショットは“東方真珠島”より。「でち」という語尾は一瞬流行った)
私が“真珠島”をプレイした理由は、6面ボスのオリジナル楽曲『黄金讃歌 〜 アイビストリスメギストス』をたまたまYouTubeで聴いたところ、それがあまりに良すぎて、「曲があまりに良すぎるゲームは遊ばなければならない」と思ったのがきっかけである。
配信は滞りなく進み、本家「東方」に勝るとも劣らない演出のクオリティ、会話ダイアログの本家「東方」とはまた違った独特さ、
まだ誰も、気が付いていなかったのである。
それが、現に代する恐るべき“未来”の始まりだとは。
“真珠島”は、フリーゲーム共有サイト、「ふりーむ」で公開されていた。 ダウンロードするために私は「ふりーむ」を使ったのだが、その際に、目に入ってしまったのである。 そう、“関連ゲーム”を表示する欄が。
正確に言えば、ダウンロードした当初は、その存在を意識していなかったと思う。
だが、そのふりーむワールドの扉が放つ光は、私の無意識下にしっかりと印象を残していたのだ。
私はDiscordでの配信後、なんとなしに再度「ふりーむ」の“真珠島”公開ページを訪れた。
そしてこんどはハッキリと、関連ゲームたちの存在を認識したのである。
それで私はこう思ったのだ。「ふりーむ」というアマチュアの島に、まだこの世に見つけられていない“真珠”が眠ているのではないかと。
まぁ、“真珠”が見つからなかったとしても、どの道フリーゲームなのだから遊ぶだけタダだ。そう思って、いくつか目についたゲームをダウンロードしてみることにした。
たしか当時は、「アマチュア感のある作品」を、意図的に選んだと思う。
“冷笑”をするためと思われるかもしれないし、そういう面は実際あったのかもしれないけど、一方で「顎集会」はアマチュアの作品特有の“良さ”を、フラットに楽しむ土壌が形成されていた。
理由は、とある理由からサーバー民の多くが任天堂から発売されたソフト『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』のコアなユーザーだったからだ。
“はじプロ”はそのソフト名から分かる通り、低年齢層を含むアマチュアを対象にしたプログラミングソフトであり、コミュニティ内で共有される作品にはかなりB級なものも多かった。
「アマチュアの変なもの」を、日頃から楽しんでいたコミュニティだったのだ。
「アマチュアの変なもの」の一例。??? pic.twitter.com/IULjmIL0xJ
— ひかえもん (@MonHikae33036) December 12, 2023
だから「顎集会」には、“笑って楽しむ”と“嗤って楽しむ”ということをあまり区別しないような雰囲気があった(少なくとも私はそこに境界を引くのは野暮だと思っていた)。
このサーバーなら、クセのあるフリーゲームをプレイしても、楽しんでもらえるのではないか。
そう思って、ボイスチャットでそれらフリーゲームの配信を開始した。ありがたいことに、深夜であるにもかかわらず、10人ほどの結構な人数が集まってくれた。
思った通り、配信は和気あいあいと進んだ。
クリエイター気質なユーザーが多いこともあり、それぞれのゲームをツッコミどころも含めて皆楽しむような、なごやかな空気感になっていた。
2025年1月25日、深夜0時50分。
私たちが『田丸でGO!』と、出会うまでは。
『田丸でGO!』の内容については、すでに“現代ゲーム”の記事で扱っているため、ここで詳しくはのべない。
とにかく、意味が分からなかった。文脈が何一つ掴めず、ゲームをプレイしているというよりはゲームにプレイさせられているような、主と従の関係が逆転してしまうような体験をさせられた。
そのときの私は現在のように「強烈な作品を探す」という心構えではなく、単に味のある東方系弾幕シューティングが遊べればいいかなという気持ちでプレイを行っていた。
だからまさかここまで強烈な作風を突きつけられるとは思っておらず、赤子がいきなり草間彌生を見てしまったような衝撃を受けたのである。

当時の反応の一部
恐らく、ボイスチャットにいた他のユーザーも、多くは同様の感情を抱いたと思われる。
配信が終了したあとも『田丸でGO!』の存在は、ただの1奇ゲーとして風化するのではなく、サーバー全体でぽつぽつとプレイされるようになっていった。
私は最初のプレイ時、4面ボスがあまりに手ごわすぎて、結局それからしばらくは先に進めなかったのだが、2月上旬になると「顎集会」ユーザーのひとり、
6面ボスとEXボスの弾幕のクオリティは1シューティングゲームとして見ても目を見張るものがあり、これにより『田丸でGO!』は単純な“奇ゲー”としての受容だけでなく、ゲーム性への純粋な評価もなされるようになっていく。
もちろん、TdG(Tamaru de GO!の略)の魅力を大きく支えているのが、“奇ゲー”的センスであることは疑い得ない。
第二・第三の『田丸でGO!』を求めて“奇ゲー”発掘運動も進んでいき、その中で共有されたのが、『高高高校野球部』や『やまちゃんカーレース』等の作品である。
そのムーブメント内で発掘されたゲームは、やがて“現代ゲーム”というジャンル名を付けられ、次第に『田丸でGO!』は“現代ゲームの始祖”として神格化をされるようになる。
(余談だが、『やまちゃんカーレース』の発見者は、件の“1.25事件”以前から同作品に目を付けていた。このことから、『やまちゃんカーレース』の方を真の“始祖”と見る現代ゲーム史観もある)
また、“田丸”の作者であるメルフィスワールド氏の作品研究も進む。
メルフィスワールド作品は、作品間で共通する(詳しくは『るいゲー』記事の後半を参照)世界観を備えており、“田丸”時点では謎だった各キャラクターのプロフィールが見え始めてくる。
個人的に一番激アツだったのは、『田丸でGO!』の主人公である「田丸恵美」が、記事執筆時点でのメルフィスワールド作品最終作にて最強の敵として登場したことである。
Discordにて基本的に発表順でプレイしていたこともあり、「田丸に始まって田丸に終わる」という運命を感じた。

作品名は『幸代の冒険』。『だが霊感はナァィ…』ではない
メルフィスワールド作品のプレイ配信に来ていたのが主に『顎集会』の中でもコアなメンバーに偏っていたこともあって、実のところこのあたりの面白さはあまりサーバー内で共有できていないところがある。
『田丸でGO!』だけしか知らない、というメンバーも多く、個人的にはもう少しこの部分についての面白さも広めていきたい……
このあたりになると、たまゴ(たまるでゴーの略)ブームは、一旦の落ち着きを見せる。
しかし、“現代ゲーム”ムーブメントが続いていたこと、「スマブラ」のプレイ時に私が田丸恵美のMiiを持ちキャラとしていたこと、何もすることが無いととりあえず『田丸でGO!』が遊ばれていたことなどにより、その存在は忘れられることはなかった。
そして、ゲームとしての“田丸”には、まだ謎が残っていたのだ。
その謎は、ゲームの画像データにあった。
「アクションエディター4」製ゲームの画像データは、特にツールなどを使うこともなく、簡単に閲覧できる。
問題は、背景を管理する「back」フォルダに残されていた、この画像の存在である。

主要登場人物全員が一同に介した、魅力的な“集合絵”だ。
しかし問題は、この画像データがEXをクリアしても表示されないということである。
そのため長い間タマラーの間では、没データ、もしくは遊び心としてファイルに隠された“おまけ画像”のようなものなのだと考えられてきた。
だがある日、アクションエディター4のエディタによる解析により、次の画面の存在が確認された。
(ちなみに、解析方法を発見したのは、今回の特集で“判答謎”としてスライドパズルを寄稿してくれたユーザーだ)

※絵文字が写ってるのはDiscordの画面をキャプチャした影響です……
そう、「パーフェクト」画面の存在である。
“集合絵”はちゃんとゲームの内部で使われていたのだ。これは6月下旬のことであり、5ヶ月経ってもまだ味がするSTG、それが『田丸でGO!』なのである。
また、背景は「きまぐれアフター」の教室、BGMは『プラスチックアドベンチャー』というフリー楽曲に設定されており、これも今までは内部ファイル上でしか確認できなかったデータだった。
これにて“謎”はすべて解消された……わけがない。
たしかに「パーフェクト」画面があることは分かったのだが、今度はその画面へのたどり着き方が不明であった。
どうしたら「パーフェクト」になるのか。隠し装備でクリア?EXを○○点以上でクリア?それともノーミス・ノーボムでエンディング達成?
もしかしたら画面として表示できるだけで、実際には没データの可能性もある。
頭を抱える、田丸学者たち。だが、真にものごとを解決するのはいつだって座学ではなく実働だ。
弾幕STGのコアプレイヤーであるユーザー、
“解析”から、わずか1日でのことだった。
条件は、
ノーミス・ノーボムが「パーフェクト」の条件であった可能性も捨てきれなかっただけに、そこまで非現実的でない条件であったこと、そして『田丸でGO!』を本当に味わい尽くせたことに、皆が喜んだ1日だった。
そして、7月。このサイト「あごわーるど」が本格開設され、『現代ゲーム博覧館』がオープンした。
「あごわーるど」は“「顎集会」の文化を伝える”という役割もあり、その文化として間違いなく“現代ゲーム”は欠かせなかったからだ。そして、その第一回で取り上げたのが、『田丸でGO!』である。
内容について連絡した折、こころよく掲載のご許可をくださったメルフィスワールドさんに改めて感謝を伝えたい。
……ちなみに、「パーフェクト」条件の候補として考えられていた「ノーミス・ノーボムでエンディング」だが、その後、
その人物の名は、
彼がノーミス・ノーボムを達成したのは、それを目標としてから実に70回目の挑戦時のことであった。
(ちなみに達成時の

証拠となる録画等は残っていないので、証明はできないのだが、実際に彼はボイスチャットで、9時間『田丸でGO!』のプレイを続けていた。
サーバー内で、私を含め数人の目撃者がいたと思う。
サーバー民たちにより、『田丸でGO!』という山はさしあたりの頂上まで登りきることができた。
ただし、ブームが終わったというよりは、もう完全に「顎集会」に定着したという感じだ。
あとひとつ特筆しておくべきなのは、「タマラーム」というチャンネルの存在だろうか。
この名前は「田丸アラーム」を意味し、1日に1回決まった時間に、フリーゲーム夢現の『田丸でGO!』ページへのリンクが貼られるという、ただそれだけのチャンネルである。
フリーゲーム夢幻には「応援する!」という機能があり、毎日11票ずつ、お気に入りのゲームに票を投じることができる。
そして、コアなタマリストの日活は、このフリーゲーム夢幻の応援カウンターに11票を全ツッパすることなのだ。
コツコツとした正当な組織票をモットーとしており、
フリーゲーム夢幻の「応援する!」数ランキングでは、現在なんと

田丸砲田代砲のような手段はご法度。
あくまで合法的に
しかし思えば、『田丸でGO!』がきっかけで、「顎集会」の空気感がまとまっていったような感じがある。
それまでは、活気はそれなりにあっても、サーバー特有の方向性というのが、今ひとつ定まっていなかったのだ。
それが
先日私が開設した、『名GIF』というアカウントも、元を辿ればそうした文化のひとつとして生まれた。
“ミーム”という現象の役割がひとつあるとすれば、それは「個性や性格の異なる他者同士に、“共通の文化”による繋がりを生み出す」ことだ。
その意味で、「顎集会」における『田丸でGO!』は、すごく良い“ミーム”となってくれたように思う。実際、バタフライエフェクトによって、たくさんの人が少しだけ幸せになってくれたように感じるのだ(まぁ、その代わり、一人の9時間は奪われてしまったが)。感謝の言葉は尽きません本当に……
もし「顎集会」以外の方がこれを読んでいたら、ぜひあなただけの『田丸でGO!』を見つけ出してみてほしい。そしてその楽しみを、身近な人に共有してみてはいかがだろうか。
そうしたことを続けていれば、“10年後”のあなたの世界は、もっと豊かになっているはずだ!
執筆:げを
これにて、「顎集会」の側から見た、『田丸でGO!』の物語はいったんおしまいだ。
「あご通信」は、一応外部に向けて発信しているメディアだ(そうは思えない記事が多いが)。
ただ、今回『田丸でGO!』10周年記念特集をやるとなると、“内輪ネタ”の方向に行きすぎてしまう。
だからこそ、その内輪で発展していった“物語”を伝えることが先決だと思ってこの記事を書いたらやたら長くなってしまった(〔現代ゲーム博覧館〕の田丸記事より長い)。
とりあえず、なぜ我々が「田丸でGO!」に熱狂するのか、その一端だけ掴めたら幸いである。
さて、ここからは記事を書いてくれた皆にバトンを渡そう。以下の三つは、どれも個性豊かな作品だ!
(本特集では、こちらの『二次利用に際して』ページの規約に準じて、作品のスクリーンショットなどを利用しています。問題があれば削除します)