呪術廻戦マン2チョコ事変
失礼を承知で申し上げると、「ビックリマンチョコ」ブランドのコラボ製品の名称は、ヘンである。VTuber事務所「にじさんじ」とのコラボ製品、『にじさんじマンチョコ』をはじめ、「エヴァンゲリオン」とのコラボが「エヴァックリマンチョコ」、キン肉マンとのコラボが『肉リマンチョコ(読み:にっくりまんちょこ)』であるなど、とにかく珍妙怪奇摩訶不思議。
その中でも『北斗のマンチョコ』は、「ビックリマンチョコのコラボはヤバい」と企画参加者に認知されるキッカケとなった製品であり、「ロッテはもしや“マンチョコ”部分をブランドの核としているのか?」という疑念がよぎらざるを得ない“マンチョコ”の大胆な使用で、“ほ”のトップをかっさらった伝説的オモシロワードである。
そして、ビックリマンチョコのビックリ名称が次々発掘されてゆくにつれ、参加者の間で「ビックリマンチョコ、もう一つくらいトップでもいいんじゃね?」という気運が高まり始めた。それくらい、株式会社ロッテがしてきたある種の企業努力には目を見張るものがあったし、50音全体を通して「天丼」をするのも、たまの色気として悪くないだろう。
そうなると、『北斗のマンチョコ』はマンチョコシリーズの掴みとしてバツグンなので、“あ”から順番に見ていった時に“ほ”よりは後ろのワードである方が天丼として美しいだろう。また、近すぎないことも大事だ。忘れた頃にもう一度マンチョコ!であった方がより笑えるのである。
そして私たちの目に留まったのは、その頭に“じ”を冠するあのワード。そう、ページタイトルにも入っている、
だ。
どこがどう面白いのか。答えはただ一点。“2”の置かれる位置である。正直初代『呪術廻戦マンチョコ』も前部と後部で字面が違いすぎてて面白いが、その第2弾はなんと“マン”と“チョコ”の間に2が挟まれてしまっている。普通なら「呪術廻戦マンチョコ2」になるはずで、それをあろうことかマンツーチョコである。ヤバすぎる。
正直に話せば、先に語った「天丼として~」という理由付けはほとんど嘘に近い。実際はただオモシロワードである呪術廻戦マン2チョコがあり、マンチョコダブりを擁護するための理由があとから考え出された、というのが事の真相なのだが、とにかく『呪術廻戦マン2チョコ』は“じ”の一番に相応しいと、参加者のほぼ全員がそう思ったのである。
そうして、呪術廻戦マン2チョコは、“じ”のトップとして改めて提案されることになった。先のトップは『ジャボチカバ』だったが、結果はお察しの通り。呪術廻戦マン2チョコの圧倒的得票率で、『呪術廻戦マン2チョコ』は「“じ”で一番面白い言葉」となったのだ。
したためた提案文
『北斗のマンチョコ』の暑苦しいほど真正面から殴りかかって来る面白さに比べ、『呪術廻戦マン2チョコ』が持つ面白さはじわじわ来るタイプの面白さで、少しトリッキーだ(偶然にもそれぞれの作品の空気感が反映されているようにも思える)。
バランスも取れているし、これでヨシ、と思った矢先。一人の参加者によって、ある提言がなされた。それは、かつて『ケ・セランパサラン』を殺した、あの提言である。
な、なにを言うか。ロッテの公式ページでもホラ、この通り。『呪術廻戦マン2チョコ』と記載されているではないか(上部スクショ参照)。
そもそも、ロゴがどう見ても“呪術廻戦マン2チョコ”である。たしかに不自然な表記ではあるが、だからこそ面白いのであり、まさか本当は『呪術廻戦マンチョコ2』であるなんて、そんな不吉な可能性は、考慮すること自体が冒涜的なのである。
――と、私もはじめはそう思っていた。ロッテの公式ページ以外で、ことごとく「呪術廻戦マンチョコ2」という名称が使われまくっているのを見るまでは。
呪術廻戦マンチョコ2(ロッテ)2023年10月17日発売(日本食糧新聞)。
昨年大好評だった『呪術廻戦』とビックリマンが再びコラボ!「呪術廻戦マンチョコ2」10月17日(火)より東日本(静岡含む)先行で発売(PR TIMES)。
『呪術廻戦』とビックリマンのコラボ商品「呪術廻戦マンチョコ2」でまさかの“夏油フェニックス”が爆誕。描き下ろしの「懐玉・玉折/渋谷事変」編キャラクターシール全24種を収録(電ファミニコゲーマー)。
「ビックリマン」シリーズから、『呪術廻戦マンチョコ2』が発売!(TVアニメ「呪術廻戦」公式サイト)。
一応個人ブログ等では「マン2チョコ」表記の記事も見られたものの、呪術廻戦公式も“マンチョコ2”なんだから、さすがにもう厳しい。それでも、まだマン2チョコである可能性は残っている。もしかしたら、各サイトの担当者方が「マン2チョコはあり得ないだろう」と判断して、勝手にマンチョコ2にしてしまったのかもしれないではないか!そんなわずかな望みに賭けようとしたその時、マン2チョコに対して決定的に不利となる証拠が見つかる。
それは、『にじさんじマンチョコ2』という製品の存在だ。この『にじさんじマンチョコ2』は、どう見てもロゴが「にじさんじマン2チョコ』でもあるのにもかかわらず、『にじさんじマンチョコ2』として、しかも頼りにしていたロッテの公式ページで“マンチョコ2”と表記されていたのである。
これはもう、『呪術廻戦マン2チョコ』は、“存在しない言葉”として扱った方がいいだろう。おそらく最後の支えであってロッテの“「呪術廻戦マン2チョコ」発売!!”という見出しも、誤記である可能性が高い。一応言葉として完全に無から生成された言葉ではないが、それでもこれを許すと今までの基準が崩壊してしまう。
ロッテに問い合わせすることも考えたが、実はこのことが分かったのは、「面白い言葉」の審査終了2日前であり、回答を待っている時間は無いと判断。我々は急遽“じ”のワードを洗い出すことになった。
その結果、「ババ抜き」抜きには存在が許されない言葉『ジジ抜き』、意味の軽さに反して字が強すぎる『邪魔』などが挙がったが、最終的に『ジモティー』に落ち着いた。“じ”にはこうした、少々ビターな物語が隠されていたのである。
……ちなみに、それはそれとして、ロッテへの問い合わせは行った。
メール内容は、「記事でロッテ様の製品、呪術廻戦マン2チョコ/呪術廻戦マンチョコ2を取り上げたいのですが、正式名称がどちらだか分かりません」という旨。間違ったことは伝えてないはず。
とはいえ、ロッテと言えばお菓子業界の大手も大手。大企業であり、場末のモノ書きからのメールなんかにわざわざ答えてくれる余裕も無いだろう……と考え、あまり返信は期待しないことにした。
……と思いきや、なんとわずか1日でご回答をいただいた。どうやらロッテという企業は、いつも真剣に私たち消費者のことを考えてくださっているようだ。ありがとうございます。こんなくだらない企画を理由に問い合わせて申し訳ございません。
取り決め上、文面をそのまま記載するわけにはいかないが、ロッテから返信いただいたメールはおおむね以下のような内容(とトーン)であった。
このたびは弊社の商品をお取り上げいただきありがとうございます。
ご質問いただいた商品名につきまして、正式名称は『呪術廻戦マンチョコ2』となります。
弊社ページの記載につきまして、ご不審の念を抱かせてしまったことをお詫び申し上げます。
お客様のご指摘は、関連部署に申し伝えをいたしました。今後ともロッテ商品をご愛顧いただけると幸いです。
……これにて、『呪術廻戦マン2チョコ』ではないことが確定したわけだが、もはやそんなことはどうでも良い。個人の1メールについて、ここまで真摯な対応が返ってくるのか、と感心してしまったからだ。ロッテさん、こんなくだらない企画を理由に問い合わせて改めて本当に申し訳ございません。
どんなにヘンな名前の商品だろうと、そこにはさまざまな人の熱意がこもっている。それを忘れないようにして、これからも幾多のマンチョコを食べたり、笑ったりしよう。私はそうこの3月、心に決めたのであった。
そして、時は2025年5月初頭現在。ロッテの『呪術廻戦マン2チョコ』ページがどうなっているのかというと
こうして、『呪術廻戦マン2チョコ』という言葉は、一時の幻として、荼毘に臥された。だが、忘れないでほしい。この世に、『呪術廻戦マン2チョコ』というきらめきがかつて存在したことを。そのことを世に知らしめるための記念碑として、いや、むしろ墓碑としてこのページをここに残す。
葬式は行っていないので、『呪術廻戦マン2チョコ』をどうか成仏させてやってくれる誰かがこのページを読んでくれることを祈るばかりである。五条悟とかね。
(スクリーンショット等、画像の出典元は全て画像リンク先にございます)