This Story
“こ”。か行お段、50音全体で見ても上から10番目と若い番号を持つ枠であり、重要視されるべき平仮名である。そんな“こ”において、最初にトップに立ったのは
であった。「作品名のくせに長い」というキャッチーな面白さがあり、票をよく獲得できたのだ。
しかし、「一番面白い言葉」であるかと言われると、正直なところ疑問が残るだろう。まずかなりポピュラー、よく知られているワードであるし、加えて作者である秋本治氏が「ジャンプという人気雑誌で目立つためにつけた戦略的なタイトル」の可能性があり、その作為性も否定できない。
言うなれば“シャバい”言葉であり、そのため我々オモシロワードハンターは一刻も早く代替となる言葉を見つける必要があった。
そして、こち亀に代わる新たなトップとして最初に提案されたのはこちらの
であった。
小麦粉をモチーフにしたマスコットなのに「こむぎん」や「こみゅぎん」ではなく『こぎみゅん』とわざわざ名付けている。その事実に、サンリオという企業がここまでのし上がった理由を感じざるを得ないキャラクターだ。
しかし、投票では『こぎみゅん』の票は伸び悩んでしまう。キャッチーな面白さを持つ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』と比べ、ややひねくれた『こぎみゅん』の面白さは十二分に伝わらず、押され気味であった。
こぎみゅん提案者 — 2025/02/07 16:58
やばいこぎみゅん負けてる!!!!!!!!
サーバー民 — 2025/02/07 16:58
まあそりゃこち亀は強いわ
長いけどタイトルってところが強い
サーバー民 — 2025/02/07 16:58
こぎみゅん悪くないと思うけど、サンリオがわざと面白くしてる感もちょっとある
その他『こぎみゅん』本人よりその弟である『こぎみょん』の方が面白いのでは、という意見などもあり、こぎみゅん提案者は議論の終了を待たずに、その提案を取り下げた。
しかし、アンチ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』であるこぎみゅん提案者は引き下がることなく、負けじと次のワードを提案する。
このワードに関しては、テキストより画像でそのさまを示した方が良いだろう。
“両さんの天体大達人”という文字列を見た瞬間100人中100人が「両さんに天体のイメージがなさすぎる」という感想を抱くであろうこのワード。
倒すべき相手である『こちら葛飾区亀有公園前派出所』からオモシロワードを発見するという、こぎみゅん提案者――否、こちら葛飾区亀有公園前派出所 両さんの天体大達人提案者の合気道的妙技は見事成功し、大衆の指示を得た“天体大達人”は見事“こ”のトップとなったのだ。
しかし『こちら葛飾区亀有公園前派出所 両さんの天体大達人』クラスのワードでさえ、「一番面白い言葉」とは呼べないのでは?という疑念を呈する者は少なくなかった。最初に「天体大達人より面白いだろ」と提案されたのは、次のワードである。このワードに関しては、テキストより画像でそのさまを示した方が良いだろう。
言うまでもなく“天体大達人”と同じシリーズであり、“地図大達人”という語が小6のぼっちのあだ名みたい、という理由も付けて提示されたワードだ。
しかしこのワード、評判が悪く、
サーバー民 — 2025/02/08 18:49
両さんが地図に詳しいのは筋が通ってるじゃん
警察官なんだから
サーバー民 — 2025/02/08 18:52
天体大達人のタイダイタツの部分好き
サーバー民 — 2025/02/08 18:54
語感で勝ってるよな
テンタイダイタツジンのおさまりの良さといったら
それに比べてチズダイタツジン
チズダイ地方のタツジンみたいだもん
地図大達人提案者 — 2025/02/08 18:56
韻を踏みすぎてると逆に面白くあにあに?
チズダイタツジンの期待を裏切られる感じが面白い
サーバー民 — 2025/02/08 18:56
もう動揺隠せてない
面白くあにあに?て
などとフルボッコの憂き目にあいあえなく撃沈。提案は取り下げられることとなった。
その後天体大達人のまま1ヵ月ほど経過し、提案の〆切も近くなってきた3月上旬。ここにきて「本当に“天体大達人で良いのか?」という気運が高まりはじめる。
たしかにテンタツ(“天体大達人”の略)は、商品名であることや、やや画像頼りであること、「オタクのユーモアすぎる」などといったマイナス点もあり、少々下品である印象も受ける。そのため、“こ”で面白い言葉はあらためて詳しく洗い出されることとなった。
そしてテンタツ超えワードとして二度目の提案をされたのが、次のワードだ。
コーヒーコだから面白い。そういう理由で選ばれたのだが、お察しの通り、ここまで来るともう何が面白くて何が面白くないのかみんな分かんなくなってきている。
結局これも“天体大達人”を超える大衆の支持を得ることはできず、投票で敗北。
その他『コホコーヒー』『コミュニケーション検定』『コラージュ ガリャルダガランテ』等さまざま発掘されたものの、どれも決め手に欠けるワードであった。
しかし、目を見張るワードは突然やって来る。「それ」が見つかったのはなんの予兆も無く、極めて突然のことだった。
そう、
が発見されたのである。詳しい説明はここではしないが、やや不謹慎であるということを除けば、文句なしのワードだ。
こうして、意外とあっけない結末を迎えたのが、この物語、いや、“こ”の物語という訳である。
この文章は、当初ならここで終わるつもりのテキストであった。あらかじめ草稿は書いておいたものの、オモコロ杯2025の〆切に間に合わせるため、清書してページにすることができなかったのだ。
まぁオチも弱いし、後から見返したら「わざわざページにするほどでもないかな」と感じたので、文章[This Story]は、およそ2ヵ月半の間、PCのストレージ内に眠っていたのである。
しかし、今の私には眠っていたテキストを呼び起こし、完成させる動機ができてしまった。なぜならば、“こ”の枠に、トンデモない大型新人が表れてしまったからである。
そのニュー・チャレンジャーが発見されたのは、オモコロ杯が発表された翌日。私たち「顎集会」民が「たまごっちのめめっちには本当に人気があるのか?」という議題で意義深いディスカッションを交わしていた、土曜の朝だった。
話題が膨らみ、最新のたまごっち事情がどうなっているのかと、Tamagotchi Uniのキャラ紹介ページを眺めているとき、
「その者」は姿を現した。
悪魔の十一文字をその名に掲げて馳せ参じた白き物体は、たまごっちの『うーぱっち』とあの『こぎみゅん』がコラボ企画「Tamagotchi Uni×サンリオキャラクターズ」にて現出した悪魔合体であり、かつてこの地で敗北を喫したはずのワードがともすれば“天体大達人”以上にもなる破壊力を携えて、私たちの眼前にその身を顕現させたのだ。
『こぎみゅんなうーぱっち』が『コチャバンバ水紛争』を超え、“こ”の一番を奪還するようなワードだとは私自身思っていない。
しかし、私はかの文字列を見たとき、姿を消した『こぎみゅん』が力を増して復活したという事実に一種の興奮と高揚を覚えたのだ(いや、この企画が始まる前に『こぎみゅんなうーぱっち』は誕生しているので、我々が気づいていなかっただけなんだけど)。
「面白い言葉」はこの世にもっともっと存在する!
その他にも、『万歳・くたばれ説』 『マラカス』 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』などの強ワードがオモシロハンターによって現在進行形で発見されており、「面白い言葉」には、発展の余地がまだまだ、無限にも等しい可能性が残されていると言えよう。
この物語に、終わりはない。
(スクリーンショット等、画像の出典元は全て画像リンク先にございます)